【全若者必読の小説】マルチの子

読書記録

どんな小説?

作者の西尾潤さんの実体験に基づくネットワークビジネスを題材にした小説。

自己肯定感が低く承認欲求が強い主人公がネットワークビジネスにハマっていく物語だ。

作者自身が体験されているだけにネットワークビジネスの世界がリアルに感じられて一気に読み進められた。

物語の中ではある程度主人公が成功していくのだが、その成功は多額の借金によって支えられている。他人から見れば華々しい成功を収めているが実態は火の車だ。

ネットワークビジネスの実態

またこのビジネスの仕組み上ダウンの成功がアップの成功になるため、アップとの人間関係、信頼関係、アップからの褒め言葉、励まし、優しさなどは綺麗事であり虚構で、突き詰めればアップの利益のためである。しかしダウンにさらにダウンがついたら同じことを自分のダウンにしていくのだ。

全員が騙され、そして騙していく構造だ。そして誰もが悪いことや詐欺まがいのことをしていないと信じたくない、なんなら正しいことをしていると信じたい、信じずにはやっていけないビジネスモデルだから綺麗事を言って洗脳されていくのだろう。

だからこそ本書のあとがきにもあったが、嘘の褒め言葉を言っている間に、虚構の承認を得ている間にそれが当人の中で本当になってしまう。嘘をついていることに対する自覚すら無くなって、全員が自己洗脳に陥ってしまうのがこのビジネスの怖いところだ。

自分のマルチ体験談

実は私も大学の時の先輩に騙され、ほぼ洗脳されてしまいマルチの活動を行っていたことがある。

私の場合はこの作者のように成功しなかったので、ある程度成功した人から見えるマルチの世界や実際の懐事情はわからないが、この小説を読めばマルチの実情を疑似体験できる。この小説はネットワークビジネスの中での出来事や起こりうる感情をかなり現実に即して描いている。

作者は現実には成功の肩書きの裏に700万の借金を抱えていたそうだが、私も実際に夜中の3時頃に契約させられ、リボ払いで100万くらい借金をつくってしまった。

お金の知識が全くなかった自分が「あれ?リボってやばい?」と気づいたのはある日返済額の内訳を見た時だった。

毎月リボの分は1万円返済していたが、そのうちの5000円が利息だったのだ。それに気づいた瞬間全力で繰上げ返済を始めた。

今思えば親に建て替えてもらって元金のみを親に返済していくなどすればよかったのだが恥ずかしい、惨めだという感情のせいでそれはできなかった。

結局一人暮らしをしながら毎月10万返済、ボーナスは全額返済に回して2年から3年返済にかかった。本当に辛かった20代前半だった。

幸い勧誘しても友達を失うことはなかったし、それでも変わらず友達関係を続けてくれている友達にはには感謝している。

また、 自分が一時的にでも成功しなかったおかげで、自分と同じように多額の借金を誰かに背負わせることがなくて本当に良かったと思う。

知っていたら防げることがある

その当時の自分は社会人として会社勤めを始める前で、お金に関する教育も受けたことがなく知識がゼロに等しかった。高校卒業前に借金やリボ払いは絶対だめだということさえ知っていればあんなことにはならなかっただろうと思う。

また、今振り返ってみるとネットワークビジネスでは、彼らが新規顧客をとりにいく時やミーティング、ビジネスを始めたあとも多くの心理学のテクニックが使われていた。

「影響力の武器」という本に書いてある心理原則(返報性、権威、希少性、コミットメントと一貫性、好意、社会的証明)はすべて使われていたし、サンクコスト効果も働いていた。

「ビジネスで成功するには環境設定が大事」という言い分でグループが住んでいる近所に住むように勧められた。こうして外部との接触を極力遮断し孤立し、経済的に精神的に辛くなったら彼らを頼るような環境を作られてしまった。

高校卒業までにお金の知識と心理学の知識があれば、この多額の借金も防げたのかもしれない。

リボ払い、ダメ、ゼッタイ。

そして「マルチの子」と「影響力の武器」は高校卒業までに必読の課題図書としておすすめしたい。

 

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